今回のテーマは、もう1つの抵抗を生み出す引き金となる言葉、「断定的な表現を避ける」です。
断定的な表現とは?
断定的な表現にはどのようなものがあるのでしょうか。
実際に、具体例を見ていきましょう。
(a)「彼女は日本人だ。」
(b)「彼はとても優秀な営業マンだ。」
(c)「それは自分勝手な意見だ。」
(d)「あのプロジェクトがうまくいくはずがない。」
このような表現が、「断定的な表現」といえます。
これらの表現は、次のように分類することができます。
(1)事実
上記例で言えば、(a)「彼女は日本人だ。」が事実にあたります。
(2)意見・推測
上記の(b)~(d)が意見・推論にあたります。
私たちが注意するべき表現は、(2)意見・推論です。それは事実でないのにも関わらず(事実ではなく意見・推論です)、私たちはそれがあたかも事実であるように表現してしまうことがあります。
そうすると、何が起きるのでしょうか。
そうです、相手が抵抗をしてくる可能性があるのです。
例えば、(b)。
あなたがライバル視している同僚のことを、上司がこのように言っていたらどんな気持ちになるでしょうか?
例えば、(c)と(d)。
上司や同僚からこんな言葉を投げかけられたら、どんな気持ちになるでしょう?
全ての人がそうだとは言いませんが、抵抗を生む可能性は高いといえます。
対応方法
それでは、相手の抵抗を生まないようにするためには、どうすればよいのでしょうか。いくつか対処方法を考えてみましょう。
対処方法1:事実を述べる
例えば、(b)「彼は優秀な営業マンだ。」
「彼が優秀である」というのは、実は、発言者の意見です。
意見ではなく事実を述べることで、抵抗を少なくすることができます。
→ 【変換例】(b)「彼は先月、営業成績がトップだった。」
いかがでしょう。こちらのほうが素直に受け取れるのではないでしょうか。
対処方法2:質問形にする
例えば、(c)「それは自分勝手な意見だ」
「自分勝手な意見」というのも、発言者の意見です。
これを、質問形式にすることで、断定表現を避けることができます。
→ 【変換例】「それは自分勝手な意見ではないだろうか?」
このように、質問形にすることで、決め付けを避けることができます。
さらに欲を言えば…
次のように否定的な表現は、使わないようにしたいところです。
→ 【変換例】「その意見について、他の人はどのように感じるでしょうか?」
Iメッセージを使う
例えば、(d)「あのプロジェクトがうまくいくはずがない。」
これを、Iメッセージを使った表現に変えると次のようになります。
→ 【変換例】「私はあのプロジェクトはうまくいかないのではないかと心
配しています。」
ネタばらしになってしまいますが、
この「心配です」という表現を、私はよく使っています。
「心配している」と、いう言葉が相手の心理に不安を感じさせること、かつ、「自分のことを心配してくれているんだ」とその人のためを思う気持ちが伝わること。
この2つの理由から、受け取りやすい表現になっているのではないかと思います。
いかがでしょうか。
ちょっと表現を工夫することで、相手の抵抗を少なくすることができます。
ベンジャミン・フランクリンは彼の自叙伝の中でこう述べています。
決定的な意見を意味するような言葉、例えば、「確かに」とか、「疑いもなく」などという言葉はいっさい使わず、その代わりに「自分としてはこう思うのだが…」とか、「私にはそう思えるのだが…」と言うことにした。
相手が明らかに間違ったことを主張しても、すぐそれに反対し、相手の誤りを指摘することをやめた。
そして「なるほどそういう場合もあるのだろうが、しかし、この場合は少し事情が違うように思えるのだが…」というぐあいに切り出すことにした。
こうして、今までのやり方を変えると、すいぶん利益があった。
人との話し合いがそれまでより楽しく進む。
控えめに意見を述べると、相手はすぐ納得し、反対するものも少なくなった。私自身の誤りを認めるのが大して苦にならなくなり、また、相手の誤りも、たやすく認めさせることができるようになった。
どんな言葉が相手の抵抗を生んでしまうのか、生まないのか、皆さんのコミュニケーションをより円滑なものにするためにも、ぜひ意識をしてみてください。
最初は、戸惑う部分もあるかもしれませんが、これが身につくと、とてもコミュニケーションが楽になります(^-^
断定的表現を避けるを、実践してみましょう!!
次のことを実践してみましょう!!
(1) 断定的な表現を使わないことを意識してみましょう。
余裕のある方は、先週に引き続き肯定的な表現を使うことも意識してみて下さい。
さて、実践してみていかがだったでしょうか。
私は、コーチングのセッションの中で断定的な表現をしないように注意しています。
理由の1つは、前回もご説明したように、相手の抵抗を生む可能性があること。そして、もう1つの理由は、クライアント自身に気づいてもらうためです。
例えば、あるクライアントが特定の部下Aさんの話ばかりをしているとしましょう。
「Aは、やる気がない。」
「Aは、いつも私の顔色ばかりをうかがっている。」
「Aは…」
ここで、
「Aさんのことを随分気にしていますね。」
とは言わず、
「Aさんのことを随分に気にされているように見えますが…いかがでしょうか?」
と尋ねます。
最初の言い回しだと、私が感じたことを相手に押し付けてしまっている印象がありますが、後のほうでは、「私にはこう見えますがいかがでしょうか?」と相手に問いかけをしています。
人間は不思議なもので、質問されるとその回答を考えてしまう傾向があります。つまり、質問を投げかけることで、クライアントの考えるきっかけをつくることができるのです。
とはいっても、ついつい断定的な表現をしてしまいそうになることもあります。そんなときは、その後に、「…と、私は思うんですけれどね。」
な~んて、とってつけたような言い回しをしてみたり。
皆さんもぜひ、色々試してみてください。(^-^)
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