今回のテーマは、「誤りを認める」、つまり、「謝る」です。
マジックフレーズとは?
先手で使うと不思議と効果が上がる言葉、マジックフレーズというものがあります。
挨拶、感謝の言葉、そして、侘びの言葉がそれにあたると、
話し方研究所所長の櫻井弘氏は、以前、雑誌PRESIDENTの中で述べています。
※参考:2005/3/7号 PRESIDENT『話し方革命』より
はたして、本当にそうなのでしょうか?
具体的なケースを見ながら、考えてみましょう。
例えば、ある人が、あなたの大切にしているガラスの置物を、壊してしまったとします。
その時、あなたはどんな気持ちになるでしょうか。
逆に、このとき、相手はどんな気持ちでいるでしょうか。
少し考えてみてください。
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いかがでしょう。
ちょっと極端かもしれませんが、こんな気持になるのではないでしょうか。
自分 | 相手 |
「相手に非があるのだから謝罪するべき!!」 | 「まずいなぁ、絶対怒られる。どうしよう困った」 |
普通に考えれば、非がある方が謝るべきです。
けれど、もし、あなたが、次のように相手を責めたら、一体何が起こるのでしょうか?
あなた:「あれは私が大切にしているものだって知っていただろう、壊すなんてあんまりだ!ひどいじゃないか。どうしてくれるんだ。」
相手が素直に謝罪する場合もあるでしょう。
でも、場合によっては、この言葉が逆に相手の感情を逆なでしてしまう可能性も考えられます。
相手 :「こっちだって悪気があったわけではないのに、そんな言い方はないじゃないか!!」
こうなると、お互いに、引くに引けなくなってしまうこともあります。
相手に非があると考えられる場合
それでは、どうすれば良いのでしょうか。
私は、例え相手に非があっても、先ず、自分の過ちや落ち度を、認めるようにしています。
この場合は、(ふつうは)相手は「自分が悪い」ことを十分認識しています。
頭では、「責められてもしかたがない。」と思ってはいるのですが、実際に責められると、人はつい感情的になってしまうことがあります。
相手を責める言前に、自分にも落ち度が無いか考えてみましょう。
例えば、前出の例であれば、
- 自分が、不安定な場所に置いてしまった
- 事前に、大切なものだから注意して取り扱うよう注意しなかった
などが、考えられるかもしれません。
相手を責めたい気持を、ここでぐっと我慢して、
「大切なものだから注意してほしいと、私が伝えるべきだった。申し訳ない。」
と、先ず伝える。
こうすることで、相手が感情的になることを防ぐことができるのです。
以前、こんなことがありました。
駅から自宅に帰る途中のことです。
日も落ちて、あたりはすっかり薄暗くなってきていました。
家まで、あと少しのところで、左に曲がろうとしたときのことです。急に、自転車が目の前に飛び出してきました。「キキーッ」とブレーキの音。前をみると、そこには自転車にのった若い男性の姿がありました。相手も、むっとしているようです。
正直な話、頭にきていました。
けれど、「もし、逆ギレされたら…」と、私は、急に恐怖を感じました。そこで、私から謝って、穏便にすますことにしました。
「ごめんなさい…」
すると、驚いたことに男性はこう言ったのです。
「あ、いえ、僕こそすみません。」
その男性に対して不快感をもっていましたが、その言葉をきいて、
「なんだ、良い人でよかった」
と、その男性の印書がよくなっただけでなく、自分自身もとてもよい気分になっていました。
相手に非がある場合(と、そう自分が思っている場合)。
ついつい、相手を責めたい気持になる傾向が、私たちにはあります。
そこをぐっとこらえて、たった一言、言葉を伝えるだけで人間関係がよくなるなら、使わない手はないですよね。
自分に非があると考えられる場合
今度は逆に、自分に非がある場合を考えてみましょう。
これは、嫌な気分ですよね。相手に何を言われるか、気が気じゃありません。
だけどこういうときこそ、相手が何かを言う前に、きっぱりと自分から謝ってしまいましょう。
相手の攻撃意欲(?)をそぐことができるかもしれません。
以前、こんなことがありました。
SE当時、仕様を曖昧にしたまま開発を進めてしまったことがありました。
お恥ずかしいことですが、私たちはテスト段階になりそのことにはじめて気がついたのです。
やむ終えず、お客様に時間をとって頂いて仕様の確認をすることになりました。
明らかに非はこちらにあります。
しかも、説明をしてくれたのはMさんという方でした。先方のエンジニアなのですが、ちょっと癖があり、お世辞にも口が良いとは言えない人でした。(つまり口調が厳しいのです)
予想通り、Mさんからは私たちを非難する言葉が出てきました。
「そうですよね、Mさんの仰る通りです。ちゃんと仕様を確定せずに進めてしまい申し訳ありませんでした。ぜひ、色々教えてください。」
気がつくと、こんな言葉を私は発していました。このときは、戦略があったわけではありません。
こんなふうに言われるとは、思っていなかったようで、幸運にも、私たちはそれ以上Mさんから責められることはなかったのです。
こういった経験もあって、私は、誤る必要がある場合には、相手より先に誤るように心がけています。
まさに、マジックフレーズですね。
「謝る」の漢字は、「感謝」の「謝」なのですよね。
そう考えると、謝ることって、感謝を伝えることにもつながるのかもしれません。
誤りを認める(謝る)を、実践してみましょう
このことを、実践してみましょう!!
(1) 周囲の人を観察して、自ら先に謝る人と、そうでない人、どんな違いがあるのか観察してみてください。
私は、「謝る」という言葉を聞くと、ある人から聞いたこんな話を思い出します
Tさんは、某生命保険会社の所長をしています。
彼が、20代の頃、信州地区にある支店へと異動になりました。
この支店、問題支店というのでしょうか…
非常に成績が悪く、所員の職務態度もひどいものでした。
遅刻や無断欠勤は当たり前。
もちろん、所員さんたちは、所長であるTさんの言うことなんて全く聞いてくれなかったそうです。
異動から半年が経過したある日、本社の偉い方が支店を訪問してくることになりました。Tさんは、所員全員を集め、こう伝えました。
「明日は、本社から偉い人が来る。明日だけは 何があっても絶対に遅刻するな。」
次の日、Tさんが目覚めたのは9時前。既に、支社にいなければいけない時間です。
あわてたTさんは、自宅を飛び出し支社へと急ぎました。それまで、遅刻など1度もしたことがなかったTさん自身が、よりにもよって遅刻をしてしまったのです。
オフィスに入ると、無言の所員たちがこちらを見ています。
Tさんは気まずさと、恥ずかしさで顔をあげることができませんでした。
少し考えて…
Tさんは正直に謝ることを選びました。
「昨日、皆にあんなことを言ったのに、本当に申し訳ありませんでした。反省しています。もう2度とこのようなことはしないので許して欲しい」
と、深々と頭を下げて謝りました。
それから、Tさんに対する所員さんの態度が変わりました。
今では、遅刻や無断欠勤をする人もいなくなり、営業成績も上がってきたそうです。
自分の非を、正直に認めることは勇気がいることです。
だからこそ、それを実践できる人を、人は信頼するのかもしれません。
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